多彩な取り組みを通して
クリエイティビティを育てるICT教育

城北中学校・高等学校

多彩な取り組みを通してクリエイティビティを育てるICT教育

海城では今年度から、各教科の枠組みを超えて生徒の主体的な学びを実現していくKSプロジェクトを開始。そのプログラムの一つ、高校1〜3年生対象の「言葉系外部コンテストにチャレンジ」では俳句甲子園の全国大会出場を目指して、俳句づくりに取り組んだ。


—どのような取り組みを行っているのですか。

清水 昨年から、全学的にiPadを使用した授業を開始しました。現在は主要5教科をはじめ、体育などの科目でも活用されています。

数学では、生徒一人ひとりiPadを使って問題を解き、大型モニターに各自の解答を映し出すなど、ICT機器を駆使した授業を展開しています。

夏休みには、iPadを使って数学の講習を行いました。iPadで利用できる様々なアプリ(グーグルなど)の生徒アカウントを用意し、常に生徒の傍らに置いて自由に使わせるようにしました。また、数学ではあまりグループワークは行いませんが、講習ではグループごとに問題に取り組み、各自が解いて、答えを発表し合う機会も用意しました。

授業では難しくて避けていたような問題もiPadによって取り組みやすくなりました。数式をグラフで表わすソフトを使って、数式の変化を図表で確認したり、解き方を動画で紹介するなど、多様に使っています。

他の教科でも、iPadの使用方法を限定せず、各教員の方針に任せています。授業をどのように変えていくのか、じっくり検討するなかで、ICT機器を使って教員のアイディアを実現し、継続的に活用できるように、教員向けのiPad研修を毎学期実施し、サポートしています。

また今年、iPadの台数を増やし、1学年全員が一斉に使える環境が整いました。学習以外でも、学年ごとの取り組みなどに使用できるようになりました。

井上 ロイロノートやアップルペンシルなど、教員によって使用するツールは異なります。多様なものをフレキシブルに使えるのが本学のICT教育の特色です。

物理では、情報を共有するツールとして活用しています。例えば、渦電流という物理現象について、イメージ図を描いて提出させる、といった作業も、iPadを使えば簡単にできます。

また、iPadはアクティブラーニングのツールでもあります。高3の演習では、生徒同士がグループになって入試問題を作成するアクティブラーニングに挑戦しました。作成した問題をすぐに全員に配信できるので手間がかかりませんし、解答の添削もしやすいです。この過程で、入試問題がどのように作られているのかを理解していきました。高3の物理は入試の演習が多く、単調になりがちですが、楽しみながら作業を進めていました。iPadを取り入れたことで、生徒の雰囲気が良くなり、授業に対するモチベーションも上がっています。

この他、クラス単位でのレポートの提出や、保護者向けのお知らせの配信など、授業以外にも様々な場面で活用しています。

清水 ICTのインフラを整備して、生徒と保護者、教員が連携できるクラウドサービスの枠組みづくりも進めています。

また、今年の高校推薦入試では、iPadを使った問題を出題しました。今までにない入試になりましたが、大きなトラブルもなく、正答率は安定していました。

—今年、中学棟にiRoomが完成しました。

井上 2020年の大学入試改革では、思考力・判断力・表現力が求められるようになります。そういった力を養うには、アクティブラーニング型の授業が有効です。

普通の教室では同じ方向を向いて授業を受けますが、iRoomでは生徒同士、向き合いながら作業ができるアクティブラーニングがしやすい環境をデザインしました。主に中学1、2年の総合学習の時間に使用しており、ICTのスキルを高め、情報リテラシーについて理解を深めていきます。また、一つのテーマについて自分たちで調べてまとめ、プレゼンテーションをするといった一連の流れを学ぶ機会にもなっています。

この他、ネイティブスピーカーによるコミュニケーションスキルの授業でも、ディスカッションやペアワークをする際に、活用しています。

清水 生徒たちはこれから、ICT機器に囲まれて生きていくことになります。本学には、各教員が独自に考えた取り組みを受け入れてくれる土壌がありますから、こうした時代の変化に対応しながら、今後も、新たなツールを積極的に取り入れていきます。

井上 生徒の興味を広げ、モチベーションを高めていくには、これまでのような一方通行の授業では難しいと感じています。物理ではアクティブラーニングを取り入れた授業を積極的に進めており、成果にも結びついています。もちろん、これまでのように教員が生徒に教えることはたくさんありますが、どういうスタイルで授業を行うのが一番効果的なのか、じっくり考えながら新たな教育を構築していきたいと思います。

清水 これからは、個々の“学びたい”という知的欲求が、学習への最終的なモチベーションになっていくと思います。その中で、分からなかったことを理解したり、何かを作り出していくことは教育の根幹になるものです。本学のICT教育では、MITメディアラボのレズニック教授が提唱している、クリエイティブな活動をする際の4つのポイント「Project Peers Passion Play(計画、仲間、情熱、遊び)」を参考にしています。日本全体が変わろうとしている中、生徒たちにはクリエイティビティを養ってもらいたいですし、私自身もICTを通して、そういった教育を進めていきたいと考えています。

取材日:2017.8.29