自由度が高いICT教室が完成。
大学入試に向けて、情報科目の対策も進む

浅野中学校・高等学校

自由度が高いICT教室が完成。大学入試に向けて、情報科目の対策も進む

コロナ禍は、教育現場のICT化が進む契機になった。必要に迫られて取り組んだ学校も多かったが、以前からICT環境やインフラ整備を積極的に進めてきた浅野中高は、大きな混乱もなく学内のICT化を実現。最先端のICT教育を進めているという。今年4月にリニューアルしたICT教室の特色や、2025年の大学入学共通テストから加わる情報科目の対策について、数学科・情報科の木村彰宏先生と、教務部長でChromebook活用検討委員長の吉澤久光先生に話を聞いた。


浅野では、2017年に学園全体の無線LANを構築したことを皮切りに、学内のICT化を積極的に進めてきた。現在、高三を除くすべての学年が一人一台のChromebookを所持し、授業だけでなく、部活動や校外学習などで積極的に活用している。教務部長の吉澤久光先生がこう話す。

「端末を活用するようになり、情報共有のスピードや質が上がっています。授業では生徒の意見を集め、課題を配信・提出するなど様々な場面で利用されていますが、授業以外でも生徒が主体的に活用する場面が数多く見られるようになりました。文化祭では学校紹介の動画の作成やVRお化け屋敷、ラジオ配信など、教員の想定以上のコンテンツが生み出されています」

端末の使用を促進し、より発展的な学習を実現するために、二つあったPC教室のうち、一つをICT教室にリニューアル。端末を活用したグループワークやプレゼンテーションに最適な環境が整った。コロナ禍や半導体不足の影響から完成が遅れたものの、今年4月から本格的に稼働している。

ICT教室には、常設のプロジェクターを計4台設置。複数のプロジェクターを活用することで、一つの画面に資料映像を写し、別の画面で生徒の意見を一覧にしたり、タイムスケジュールを表示するなど、複数の画面を同時に投影しながら授業ができるようになった。この他、小型のモバイルプロジェクターも6台導入した。1クラス45人を9つのグループに分けたグループワークでは、グループごとに画面を見ながら話し合ってアイディアを出し、プレゼンテーションの練習ができる仕様になっている。

高一の公共の授業で実施している探究学習プログラム「コーポレートアクセス」でも、ICT教室が活用されている。実際に企業から提示されたミッションについて、教室内でインターンシップとしてアイディアや意見を出しながらミッションに取り組むプログラムだ。

吉澤 久光先生

「以前のPC教室は、中学の技術や高校の情報の授業で活用するケースがほとんどでしたが、ICT教室は多様な教科で活用できる、自由度が高い教室です。生徒の反応も良く、隣が近い分生徒の活発な意見を引き出せる恵まれた環境になったと思います。すでに様々な授業に使われていますが、まだ伸びしろがあります。今後、新しい活用方法も出てくると思います」(吉澤先生)

一方、PC教室には専門性の高いソフトを搭載したパソコンを50台設置。画像処理や動画編集など、生徒が所持している端末ではできない高度な作業をする場として活用されている。

教員の他に、ICT支援員を2人配置していることも、校内のICT化に大きな影響を与えた。支援員がICT教室の運営をはじめ、日々起こる不具合にも随時対応しているという。

パソコンを50台設置したPC教室

「教員以外に専門的な人材がいることで、“守り”から“攻め”の体制になり、学内の雰囲気も一気に変わりました」こう話すのは情報科の木村彰宏先生。ただ、デジタル化にともなう課題もあるようだ。木村先生がこう続ける。

「デジタル化により、コミュニケーションのあり方が変わってきたと思います。LINEなどの情報ツールによって、対面が苦手な生徒でも会話に加わりやすくなりましたし、病気などで学校に来られないときも仲間と交流でき、それが本人の支えになることもあります。ただ、メールより直接質問しに来たほうがいいケースもある。対面とオンラインのコミュニケーションのあり方について、どうバランスをとっていくべきかが、これからの課題だと感じています」

2025年から大学入試に加わる情報科目

現在の高二が受験する25年の大学入学共通テストから、情報Ⅰの科目が加わる。東大をはじめとする国立大では情報Ⅰの科目を得点として利用する大学が多いため、国立大志望者の負担が大きくなりそうだ。ただ、木村先生がこう話す。

「本校は国公立大志望者が多いので、情報科目の対策は必須になりますが、生徒たちは積極的に取り組んでいます。実学である情報は、大学入試の先の将来に目を向けている生徒たちには必要な科目という認識があるようです。また、大学入学共通テストの情報Ⅰのサンプル問題をみると、思考型の傾向が強いようです。情報デザインや統計学なども必須なので、そういう問題に対応できるように、問題提起型の授業を行いつつ、実習などに力を入れています」

また、高一・二で週1時間ずつ行ってきた情報を、今年から高二で週2時間にするなど、時間割を変更。集中して授業を行うことで、大学入試の準備を整えている。

木村 彰宏先生

最後に、受験生に向けて木村先生と吉澤先生がこうメッセージを送る。「今は情報があふれているので、わからないことでも調べればすぐに答えを得られますが、得た情報が正しいかどうか、自分にとって有益かどうかを考え、取捨選択していく力が必要になっています。そうした力を養うためには、情報をうのみにせずに、自分の頭で考える力を身につけてほしいです。中学受験でも、知識を詰め込むだけではなく、様々なことに疑問をもって、考える時間をつくってほしいと思います」(木村先生)

「校風を理解して、受験校を選んでほしいと思います。本校には、文化祭などに参加し、先輩と交流したことがきっかけになって入学した生徒も多くいます。彼らは先輩がしてくれたように、文化祭で受験生に接しています。大学受験においても、先輩の受験生活をお手本にするなど、良い文化を後輩が引き継いでいく雰囲気があります。素直で真面目な生徒が多い浅野らしい校風だと思います」(吉澤先生)

取材日:2023.7.27