多様な才能を育む
青山学院ならではの豊かな教育

青山学院中等部

「地の塩、世の光」をスクール・モットーに、キリスト教信仰にもとづく教育を行っている青山学院中等部。一つのキャンパスに幼稚園から大学院までを擁する総合学園だ。座学だけでなく、本物に触れることを重視したカリキュラムが特徴で、一人ひとりの可能性を伸ばす多彩な取り組みがある。その一つ、中学3年生の選択授業を見学した。


中学3年生の選択授業では毎週2時間、約25講座を開講している。俳句や理科実験、社会ソーシャルイノベーション入門、数学暗号入門、名画の模写など、各教科から派生して学べるもの、それとは別に、ラクロスやタグラグビーなどの運動系、英語・中国語・韓国語などの語学系など、多彩な講座がある。この中から生徒たちが自分の興味・関心に沿って講座を選択する。担当教員が大学時代に学んだ専門分野を生かした講座が多い。大学での学びの入門編として中学生に分かりやすい内容となっている。

選択授業の一つ「中国語」では「聞く・話す」を中心に、中国語を基礎から学ぶ。教室での座学だけでなく、中華街散策や横浜山手中華学校との交流、調理実習、中国茶体験、博物館鑑賞などのフィールドワークを取り入れ、「中国」について総合的に理解していく。授業を担当している柳本真澄教諭がこう話す。

「道案内や料理の注文、自己紹介などの簡単な中国語が話せるようになることが講座の目標です。まずは中国語に興味を持ってもらうことが第一なので、講座では中国について多面的に学べるように工夫しています。メディアで報道される中国は偏った情報が多いものの、最近は街中で中国語を耳にする機会が多くなっています。そのため、講座の人気は高まっており、今年は定員を大幅に超える希望者がいました」

授業の前半は、中国語の文法や単語の発音について学習する。中国語で名前を呼ばれ、先生の質問に中国語で答えるなど、双方向の授業で中国語の基礎を積み重ねていく。その後、アクティビティなどを通して知識を定着させる。取材日は、授業の後半にカルタとりが行われた。

中国語には、日本語と同じように漢字が使用されている。そのため、文字を見れば意味が伝わるものが多い反面、耳で聞いた言葉を中国語で書き取ることが難しいという。その点を強化するため、先生が発音した中国語のカルタを引いたり、複数のカルタを組み合わせて単語を作る作業をグループごとに行い、点数を競い合った。

また、この授業では企業と連携を取り認知言語学を応用したe-ラーニングを導入している。eラーニングを取り入れた中国語学習は全国の中高で初の試みだ。授業中だけでなく、課題を自宅で行う場合にも利用できる。さらに、柳本教諭がこう話す。

「eラーニングでは、ネイティブの発音を繰り返し“多聴”することで頭の中に“音”の引き出しをたくさん作り、最終的にタイピングできるようにするというトレーニングです。中国語を学ぶのは初めての生徒ばかりですが、半年間で約1年分の学習成果が出ています」

授業では、アメリカの大学から青山学院大学にインターンで来日した中国人学生も授業をサポートしていた。そうした取り組みができることは、大学と同じ敷地にある青山学院の強みの一つだ。

青山学院の生徒について、柳本教諭は「物怖じせずに人と接する、好奇心旺盛な子が多い」と話す。今回の中国語紹介でも、多くの生徒が留学生に英語で質問したり、学んだ中国語を試す様子が印象的だった。

生徒中心の授業のために本校舎を建設

昨年、教科センター型の本校舎が完成した。多くの学校は、教員が学年・クラスの教室に移動して授業を行う。しかし、青山学院の本校舎は生徒が各教科の教室に移動する教科センター方式を採用している。各教科の専用エリアには教科に関連する展示物や、生徒のレポート・作品などが常に掲示されている。教科に関わるものに触れながら学ぶことで、視覚的にも教科への興味・関心を持ってもらう狙いがあるという。教科センター方式のメリットについて、小川広記教諭が言う。

「これまでは、レポートを提出して評価をもらっても、他の生徒がどんなレポートを書いているのか目にする機会はほとんどありませんでした。しかし、教科センター方式では同級生や先輩、後輩のものを見る機会があり、掲示物から他の学年がどんなことを学んでいるのかも分かります。こうした環境は学年を超えた縦のつながりを強化する意味でも、有効だと思います」

中国語の授業の中で行われたカルタとりは、昨年完成した本校舎のオープンスペースで行われた。本校舎には、将来教職を目指す大学生が生徒の勉強をみるスタディルームや、留学生と昼休みにランチをしながら英会話を楽しむチャットルームなど、オープンスペースを利用する取り組みが多く、開放的な雰囲気がある。さらに、小川教諭がこう話す。

「一つのキャンパス内に児童や生徒、学生、教員など、様々な年代の人が集まっている本校の環境は社会の縮図といえ、自然な姿だと思います。将来のモデルケースである学生の姿を見ながら学園生活を送り、そんな後輩たちを先輩が優しく見守っていく。キリスト教には多様性を受け入れ、相手を認める価値観が根底にありますが、本校にはそうした姿勢を自然に養える環境があります」

取材日:2018.7.4