すべての経験から学ぶ姿勢を
身につける本郷の教育
本郷中学校・高等学校
本郷中高は「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」を教育の柱とする、都内屈指の男子校だ。近年は、大学進学実績が顕著に伸びている。今年の東大推薦入試で医学部医学科に合格した藤村優さんと、入試広報部長の野村竜太先生に話を聞いた。
—本郷ではどんな6年間を過ごしましたか。
藤村 中学受験時の第一志望ではなかったので悔しい思いがありましたが、本郷で前向きに勉強を頑張りながら学校生活を楽しもうと気持ちを切り替え入学しました。高1までは、バスケットボール部で活動していました。それまで、自分のコミュニティは学校の中だけに限られていたのですが、高1で2週間のカナダ研修に参加して世界の広さを実感しました。カナダ研修で興味の幅が広がり、学校以外の外部の活動にもチャレンジしてみたいと思うようになりました。それで、社会が抱える課題について社会科学的な観点から考えていく社会部に入部し、様々なコンテストに挑戦しました。鹿児島県・鹿屋市の地域活性化をサポートするコンテストで優勝できたことは大きな自信になりました。
野村 本校では、さまざまな取り組みを通じて外の世界を知ってもらいたいと考えています。中でも、海外研修は学校で学んだことを発揮する場として人気が高く、希望者は年々増えています。これまでカナダとオーストラリアに各1コース用意していましたが、今年度からカナダのコースを2つに増やしました。
—脳科学オリンピックに参加しようと思ったのはどうしてですか。
藤村 将来は医者になりたいと考えていたので、学校の廊下に貼ってあった脳科学オリンピックのポスターを見て、チャレンジしてみようと思いました。予選を勝ち抜いた後、脳科学の研究センターや病院などを訪問し、医学の現場に触れました。自分の興味を再確認する、貴重な体験となりました。
本選で優勝した後、日本代表として世界大会に出場しました。世界の壁は厚く、自分が井の中の蛙だと思い知らされましたが、その体験は大きな財産になりました。他の国々の代表者とは英語で交流を深めました。本郷で文法などをしっかり学んでいましたし、先生からの指導もあったので、英語でのコミュニケーションは問題ありませんでした。彼らとの交流は今も続いています。
野村 本校の廊下には、さまざまなポスターやチラシを貼っています。藤村さんが、数多くのポスターの中から目に飛び込んできた脳科学オリンピックに興味を持ち、チャレンジしてみようと思ったのは、授業で培った知識や海外研修、社会部の活動などを通して自身の土台となるものを着実に積み重ねてきたからだと思います。多彩な経験をしていなければ、気づかず素通りしていたかもしれませんね。
—東大の推薦入試を突破するにあたって、どのような対策をしましたか。
藤村 脳科学オリンピックが東大の推薦入試の応募要件として認められるか分からなかったものの、担任や社会部の顧問をはじめ、多くの人にサポートしてもらいながら、手探り状態で準備を進めました。二次面接における、主に自然科学系の活動への取り組みについてプレゼンする“ポスター発表”では、脳科学オリンピックの体験を中心に、自分のこれまでの活動について話しました。二次の対策では、クラスの友人や社会部の後輩にもアドバイスをもらいました。10分という制限時間内に話を収めるため、削るところを決めたり、自信がなさそうに見えるところを指摘してもらいました。実際に自分がどう見えているのかを再確認する機会になりました。
野村 勉強を頑張った経験は課外活動にも生かされ、課外活動の経験は勉強にもつながっていく。これが、本校の教育方針にある「文武両道」の精神です。また、先輩・後輩の強いつながりも、本郷の伝統です。本郷は「自学自習」の精神に基づき、先輩・後輩や同級生同士が学び合う機会を豊富に設けています。自分の能力・才能だけで物事を乗り越えていくより、藤村さんのように人とのつながりから自分に必要なことを学び、目標を達成していくことは大切なことです。本郷には、そういった環境の下で、お互いに高め合っていける雰囲気があります。
—大学ではどんなことを学んでいますか。また、将来の目標について教えてください。
藤村 1年生なので一般教養が中心となりますが、医学科の推薦入学者対象のプログラムにも参加し、専門を体験しながら医学の素養を深めています。
脳や神経系にはまだ解明していかなければならないことがたくさんあります。そうした脳科学の最先端に携わっていく研究者を目指す一方、臨床医として実際の医療の現場で患者さんと接したいという思いもあります。脳科学の研究者と臨床医の二刀流で活躍するには高い知力・体力・精神力が必要ですが、チャレンジしていきたいと思います。
—受験生に向けてメッセージをお願いします。
藤村 好き嫌いせずにいろんな勉強や活動にチャレンジしてほしいです。また、付和雷同して周りに合わせるのではなく、マイペースに物事を進めたほうが、自分の内側にある向上心が輝きやすいですし、その向上心の赴くまま、いろんなことに取り組みやすいと思います。私は、本郷での勉強や多様な活動を通して視野が広がり、それが何であれ、自らの将来について真剣に思いを巡らせた果実を育て上げることができたと思います。
取材日:2018.7.31