すべての教科で確かな国語力を磨く
“日本語道場”

中村中学校・高等学校

詩や読書を通じて感性を磨く国語教育

今年、創立110周年を迎えた中村中学校・高等学校は、読む力や書く力を育む教育に定評がある。その教育の下で培われた国語力を、生徒はさまざまな場面で生かしているという。“日本語道場”ともいわれる中村の教育について、国語科の真壁美紀教諭と、江藤健教頭に話を聞いた。


中村中学校・高等学校では夏休みを4期に分け、各5日間の講習を実施。中1から高2までは、全生徒に1期以上の参加を義務付け、高3には自由選択の講習を多数設けている。中学生は主に国・数・英の3教科、高校生は理、社を加えた5教科の講習が中心だ。高3には大学入試に向けた実践的な対策を行っている。希望者対象の講習が多いが、必修のものもある。その一つが表現力・記述力育成講習だ。

高1全員が受講するこの講習は10年以上前から行われている。文章表現について技術的に学んでいくプログラムだ。4日間の授業の中で、一つのテーマについてグループで話し合い、多角的に考えた上で自分の考えをまとめていく。その学びをもとに、5日目に小論文の模試を行う。この模試は、自分が書いた小論文を学外の人に添削してもらうはじめての機会となる。講習を担当している国語科の真壁美紀教諭が言う。

「表現力・記述力育成講習は、冬休みの講習でも必修としています。冬は、一つの文章を読んで筆者が言いたいことを理解し、自分の考えを小論文にまとめていきます。高1の夏と冬の講習で小論文の執筆の基礎をひと通り学ぶことで、大学入試にも対応できる技術を身につけていきます」

大学入試改革が進む中、小論文や面接が重視される推薦・AO入試の受験者が増えている。新たに始まる大学共通テストでも国語と数学で記述式が導入されるなど、高校生にとって書く力の重要度は年々高まっている。

こうした中、中村中学校・高等学校では表現力・記述力育成講習のほかにも、普段の授業で日本語力を育てる取り組みを行っている。

例えば、卒業までに小論文とレポートを100本書き上げる「100本表現」がある。国語科だけでなくすべての教科、ホームルームなどで書く機会を設定。こうした経験を積み重ねることで、自分の考えを言葉に表現しやすくなり、論述のスキルも高まっていくという。

この他、国語科では中学1・2年生を対象に、クリティカル・シンキング(批判的思考力)を養う授業も行っている。ここでは、答えのある問いに取り組むロジカル・シンキングと、答えのない問いに取り組むクリティカル・シンキングを通して、考える力を養っている。また、昨年から希望者対象に文章読解・作成能力検定も導入した。検定で自分が書いたものを外部の人に評価してもらうことで、自分の文章について客観的な視点で考え、表現する力を磨いている。

また、自分の考えを表現するアウトプットだけでなく、正しい情報や知識をインプットする機会も多い。その一つが読書体験だ。毎朝、ホームルームの10分間を読書の時間に充てており、読書ノートに自分が読んだ本の感想や気づいたことを書き留めていく。良い本を生徒に読んでもらうために、推薦図書を一覧にまとめた「中村の100冊」も製作。読書への意欲を高めていくきっかけになっているようだ。

「本校は7階にコリドールと呼ばれる見晴らしのよい図書館があり、本が好きな生徒も多くいます。本は知識や情報を収集するために欠かせないものなので、まずはたくさんの本を読んでほしいです。その上で各々が正しい判断力を養い、表現力を磨いていけるように指導しています」(真壁教諭)

多彩な取り組みによって、活躍の場が広がる中村生

一方、官民協働で実施されている海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」に、中村の生徒は5年連続で選ばれている。これまで10人以上が日本の代表として留学を果たしているという。その理由について、江藤健教頭がこう推測する。

「この留学制度の選考は面接と書類で審査されます。学校生活のさまざまな場面で自分の考えを表現していることが、選考に生かされているのかもしれません。また、生徒が毎年選ばれていることは、後輩たちの意欲を高めることにもつながっています」

高校入試では来年から、国際科に続いて普通科の募集もスタートする。最後に、江藤教頭が今後の目標について、こう話す。

「本校の中学校には、6種類の入試で入学した多様な生徒が集まっています。来年の高校入試から普通科の募集を開始することで、校内はさらにダイバーシティ化し、互いに刺激を受けながら集団として高め合える環境が整います。そうした中で、周りと協調しながらリーダーシップもフォロワーシップも発揮できる人材を育成していきたいと考えています」

取材日:2019.7.21