櫻イノベーションはセカンドステージへ
日本大学櫻丘高等学校
学校改革「櫻イノベーション」が今年、セカンドステージを迎えた。20年後の人生を、自信を持って生きていく土台を固めるべく「ルーブリック評価(SAKURAルーブリック)」を導入し、新たなグローバル教育も始動。セカンドステージの展望について、松井寛之教頭に話を聞いた。
「自ら考え、自ら学び、自ら道を開く」という意味である日本大学の教育理念「自主創造」。日本大学櫻丘高等学校ではこの言葉を教育の柱として、70年の歴史と伝統を受け継ぎながら、2019年度より教育改革を行っている。「櫻イノベーション」をスローガンとしたこの改革は、「セルフイノベーション(自分自身の改革)」と「スクールイノベーション」の総称だ。ハード面では、キャンパス整備が完了した。一人一台タブレット端末を所持するなどICT教育も進んでおり、コロナ禍でも円滑にオンライン授業を行った。
これまでは、「グローバル教育」「高大連携体験型教育」「アクティブラーニング×ICT教育」「クリティカルシンキング」を4つの柱として改革を進めてきた。そして今年は4つの柱のバージョンアップに加え、新たに「ルーブリック+PDCA」を5つ目の柱に据え、セルフイノベーションを強化していく。
ルーブリック評価は、思考力などテストでは測れない力を可視化する指標となるものだ。このプログラムを導入したねらいを、松井寛之教頭がこう説明する。
「知識偏重型の学力に加え、これからの時代に必要な思考力、判断力、表現力、そして協働性、自主性などの力を付けさせます。現在の知識や技術が、今後ますますAI(人工知能)にとって変わることが予想されますが、それに負けない確固とした人間力を付けさせることが目的です」
具体的には、未来を生きるために修得して欲しいスキル・価値観を21のテーマに分け、到達目標を設定。価値観には5つのカテゴリー(ウィル=意志、パッション=情熱、ダイバーシティ=多様性、リスペクト=尊重、クリエイティビティ=創造性)を設定。スキルには、思考力、人間関係力など4つのカテゴリーを設定している。事前に一覧表を生徒に示しており、例えば、「この授業はクリティカルシンキングの力を伸ばす」ということを意識してから授業に臨むことで、より力が定着する。評価は生徒自身で行う自己評価だ。説明文に従って、5段階の評価を付ける。授業だけではなく、修学旅行や文化祭等の行事など、学校生活全般が評価の対象となっている。低評価だった場合は、PDCA(計画→実行→評価→改善)サイクルのもと、目標を達成できなかった原因を振り返り、次はどう克服するかという計画を立て、改善していく。評価の機会は年6回あり、卒業時には、入学時よりも評価が上がっていることを目指す。
松井教頭がこう話す。
「入学時には自己肯定感が低い生徒が多いのですが、生徒同士でアクティブラーニング等の授業や行事、クラブ活動を行ううちに、自己肯定感を高めていきます。ルーブリック評価に教員が介入することはなく、生徒が自分で意識しながら自分の力を高めていきます。これはまさに『自主創造』です。20年後の自分の人生を、自信を持って生きていける人材を育てていきます」
コロナ禍でも留学体験をデュアル・ディプロマ・プログラム
櫻イノベーションの中でも特に力を入れているグローバル教育の一環として、今年から「U.S.デュアル・ディプロマ・プログラム(以下、DDP)」を導入した。これは、櫻丘高等学校の教育課程を履修しながら、アメリカのプロビデンスカントリーデイスクールの授業を約2年履修することで、櫻丘高等学校の卒業資格と、現地の卒業資格(ディプロマ)を同時に取得できるもの。新型コロナウイルス感染症の影響で、海外語学研修や留学が休止となっている今、うってつけの制度と言える。現地へ留学するよりも、費用が安く済む点も魅力の一つだ。
学習は、週4時間のオンラインによるセルフスタディが中心。4時間のうち2時間はオンライン・ライブ授業で、提携先の日米学術センターか自宅で受講可能。質疑応答やディスカッションなど、活気ある授業が行われる。また、週2時間の補習があり、世界25カ国の先生とつながり、多様な文化を学ぶことができる。
授業はオールイングリッシュで進められるが、分からないところは、日米学術センターのスタッフのサポートを受けることができる。さらに、校内では英語の教員とALT(外国語指導助手)が中心となり「グローバルアカデミックセンター(GAC)」を立ち上げた。定期的な面談を行いながら、生徒がモチベーションを保てるよう、サポートしていく。
デュアルディプロマ取得後のメリットは、全米ハイランキング(上位5%)の18大学へ、推薦入学により100%入学できることだ。さらに、奨学金制度のあるおよそ200大学と提携しており、比較的安価な学費で留学することができる。また、国内の大学を帰国子女枠で受験することも可能となる。松井教頭がこう説明する。
「今は留学ができない状態のため、英語のスキルを高めたい、という目的で受講する生徒もいます。DDPは世界25カ国とつながっているため、国際理解を深めることができます。昨年、当プログラム開始を発表してから反響がかなりあり、帰国生の受験者も増えるなど、注目を集めています」
高大連携教育では、隣接する日本大学文理学部の講義を受講することができる。さらに、櫻丘高等学校の生徒のための特別講義が開講されるなど、大学の学びを先取りすることができる。文理学部の施設が使用できるのも、隣接する櫻丘高等学校ならではの特権だ。
最後に松井教頭が、受験生に向けて、こうメッセージを送る。
「他校にはない利点がたくさんある学校です。まず、グローバル教育が充実しています。ALTが4人いるため、クラスを分割して少人数制できめ細かい授業を行っています。そして、最大のメリットは付属校のため大学受験の負担が少ないことです。課外活動やクラブ活動など、勉強以外のことにエネルギーを注いだり、DDPに挑戦できるのも、時間に余裕があるからこそです。もちろん、他大学受験もサポートします。あらゆる受け皿があり、安心安全で、楽しい学校です」
取材日:2021.7.2