論語教育と探究教育を柱に
自分の生き方に向き合う学び
二松学舎大学附属柏中学校・高等学校
『論語』を基盤とする人間教育に定評がある二松学舎大学附属柏中学校・高等学校。その教育の中で重視しているのが、探究力と自問自答力を身につけることだ。22年度から中学校では現在の3コース制を2コース制に再編する。新たな学びがスタートする同校の教育について、副校長の島田達彦先生と中学校学年主任の玄間昭久先生に話を聞いた。
二松学舎大附柏の教育の根底にあるのが論語教育と探究教育だ。論語教育は同校の人間教育の原点でもある。そのベースとなっているのが論語の三徳「知・仁・勇」だ。「知」は座学だけでなく体験に基づいた知識を増やしていくこと。「仁」は相手を尊重する思いやりの心。「勇」はチャレンジ精神を持って自分の殻を破り進んでいく力。この三つを学校生活の指針として、様々な授業に取り入れている。
もう一つの探究教育について、副校長の島田達彦先生がこう話す。
「現在、多くの企業がSDGsの課題に取り組むなど、社会はこれまでとは異なる価値に重きを置き始めています。そうした社会で活躍できるのは、自分で課題を見つけ、解決していく人材です。それには探究力が不可欠ですから、中高の6年間で養ってほしいと考えています」
二松学舎大附柏の探究教育は、「学習支援」「進路支援」「自問自答」の3つのプログラムに分かれている。
学習支援プログラムには、探究活動の下支えになる学力を養う多彩なプログラムがある。その一つ、同校独自の365ノートは家庭学習の軌跡がわかるノートだ。苦手教科の繰り返し学習など、勉強する内容を自分で考えて1日1ページ以上学習することで、計画的、継続的な学習習慣を身につけていく。また、モーニングレッスンでは毎朝25分間、英語・数学・論語の勉強をする。このほか、放課後学習センターには専門のスタッフが常駐。日々の学習でわからないことがあれば、各教員や専門スタッフに気軽に質問できる環境がある。中学校学年主任の玄間昭久先生が言う。
「学ぶことでわからなかったことがわかるようになる喜びを、プレゼンテーションをすることで自分の考えが相手に伝わる嬉しさを実感できるようになります。本校の学習支援プログラムにはこういう楽しさを見出していく仕組みがたくさんあります」
進路支援プログラムでは、ロングホームルームや総合学習の時間を使って、将来、自分がどんな大人になりたいのかを生徒自身が考えていく。社会で活躍している人を招いた講演も実施。仕事をするイメージを明確にしていく。
探究教育の3つのプログラムで、最も重視しているのが自問自答プログラムだ。その一環として数々の体験プログラムを実施している。体験プログラムは地域を知り、日本の文化を知り、世界について知っていく流れで3年間実施される。その第一歩となるのが中1の手賀沼での体験教室だ。玄間先生が言う。
「学校の近くにある手賀沼は一時期、日本一汚い沼といわれていた時期がありますが、地域の取り組みによってもとの姿に戻りつつあります。そういう身近な自然環境と歴史について学びます。自分の目で見て、地球規模の環境問題にまで視野を広げて考えてほしいです」
このほか、国立博物館や英語村、科学未来館での体験教室や、中2の京都・奈良への研修旅行、中3のシンガポール・マレーシアへの修学旅行など、教室を離れて、異なる環境に身を置き、新たな視点で物事を考えていく多彩なプログラムがある。玄間先生がこう続ける。
「日常の授業はもちろん大事ですが、本物をみて学ぶことも大切なことです。体験プログラムで興味・関心を持つものを増やし、その上で問いを立て、自分なりの答えを発表することで、生徒の自問自答力を養っていきます」
3年間の集大成となるのが、探究論文だ。1年間かけて「問い、仮説、調査、結論、発表」の流れで約8000字の論文作成とプレゼンテーションにチャレンジする。
「こうした取り組みによって、生徒たちは自分で問いを立てて、探究していくようになります。そうして培った探究力を、総合選抜型や学校推薦型の大学入試に生かして進学する生徒もいます」(島田先生)
さらなる「探究」を求め、22年度から2コースに再編
中学では来年から、「総合探究コース」「グローバル探究コース」の2コース制がスタートする。
総合探究コースは、基本的な学力や学習習慣をしっかり身につけていくコースだ。基礎から高度な発展学習まで、生徒の成長段階にあわせた授業を行う。小テストなどで一人ひとりの理解度を確認しながら学力を伸ばす。6年間で難関私立大合格を目指せる確かな学力と、あきらめずにチャレンジしていく力を身につけていく。
グローバル探究コースは、より高度な学習内容とグローバルな学びをプラスしたコースだ。「NISHO GLOBAL PROJECT」の4本柱で学びを深め、世界で活躍できる力を養う。6年後には難関国公立大や早慶上理などの難関私立大合格を目指す。
最後に、受験生に向けて島田先生がこうメッセージを送る。
「以前は、1+1は2にならないと間違いでしたが、これからは2ではないときはどんなときかなど、自分たちで考えていくことが重要になってきます。固定観念で物事をとらえるのではなく、あえてそういう想像力を発揮していく。これからは想定外のことが必ず起きるので、そのときに立ち向かっていく力を、本校で身につけてもらいたいと思います」
取材日:2021.8.4