複言語教育で、多角的な視点を養い
社会で活躍できる人を育成校

カリタス女子中学高等学校

複言語教育で、多角的な視点を養い社会で活躍できる人を育成校

カナダ・ケベック州のカリタス修道女会を母体に設立されて、今年で62年目を迎えるカリタス女子中学校・高等学校。戦争で被害を受けた日本の力になるために来日した3人のシスターが創立した学校だ。創立者の思いや活動を受け継ぎながら、「自分が大事にされたことを他者に行う」ことができる生徒を育てている。その教育について、萩原千加子校長に話を聞いた。


―御校ではどのような教育を行っていますか。

萩原 創立以来、カナダの公用語である英語とフランス語の複言語教育を行っています。語学を学ぶことは、その言葉を話す人の価値観やその国の文化を知り、相手を理解することにつながります。英語とフランス語の両方を学ぶことで、より多角的な視点でものを考え、世界を見渡すことができる人になってもらいたいと考えています。

英語は、入学時点から高い英語力を持つ生徒が多いので、一般クラスとアドバンストクラスの2クラス制を採用しています。アドバンストクラスは、プレゼンテーションやディスカッションの機会を多くするなど、より実践に重きを置いています。学年が上がるときに行うプレイスメントテストの結果により、一般クラスからアドバンストクラスに移ることもできます。アドバンストクラスは中2の段階で英検2級レベルの英語力を身につけています。アドバンストクラスの頑張りが一般クラスの生徒の励みになり、一般クラスも積極的に英検にチャレンジ。高1に上がる段階で約4割が2級に合格しています。

第二外国語として全員が学ぶフランス語については、現地の学校でも使用されている教科書を使っています。初めてフランス語を学ぶ生徒は大変かもしれませんが、ネイティブ教員によるフランス語のシャワーを浴びつつ、楽しみながら学べるように指導しています。1学期が終わるころには、教員が話す簡単なフランス語が聞き取れるようになっています。

高校に進学するとき、第一外国語として英語かフランス語を選択します。フランス語を選択する生徒は毎年20人程で、中学から学び始めた生徒も目立ちます。大学入試もフランス語で受験する他、仏検やDELFにも挑戦しています。

本校は理数教育にも力を入れており、約4割の生徒が理数系の学部・学科に進学します。体験型の授業も多く、中1・2では近くに多摩川と多摩丘陵があるカリタスの立地を利用して、独自のタマロジーという授業を設定。フィールドワークを行います。また、中学の理科実験は週1時間、ハーフクラス(少人数授業)で実施しています。この他、英語・フランス語・数学もハーフクラスで対応するなど、週35時間のうち、約4割の授業を少人数で行っています。人数が少ない分、一人ひとりに目を配りながら、きめ細やかに指導する体制があります。

萩原 千加子 校長

―どんな生徒が学んでいますか。

萩原 本校には人の気持ちを理解し、他者のことを考える視点を持った生徒が多いです。「普遍的な愛を持って人に尽くす」という教育理念が根付いているのだと思います。また、最近は主体的に行動する生徒が増えています。「夜遅くまで学校で勉強したい」「卒業生にチューターとして来てもらいたい」など、校長室に相談にくる生徒もいます。要望に応えて自習室を夜7時まで開放し、チューター制度も導入しました。

―2019年に校長に就任されて以来、様々な改革を行っています。

萩原 生徒が希望する進路を実現するために、学力を重視した改革を進めてきました。高校生対象の放課後講習もその一つで、夜7時まで2時間の授業を行い、大学進学に向けたハイレベルな講習や、推薦入試希望者向けの志望理由書添削講座、面接対策講座などを実施しています。

土曜講座も刷新し、外国語検定や数学検定などの対策講座や、国語の読解力養成講座、英語のディベート講座など、日常の学習に加えて、学力アップを目指す多彩な講座を開講。受講生が倍増し、今は約350人が利用しています。

また、今年から英語や数学の補習の際、卒業生のチューターに協力してもらうようになりました。年齢が近いOGが対応することで、より伝わりやすくなり、勉強への意識を高められると好評です。

―最後に、受験生や保護者にメッセージをください。

萩原 本校には、活発な生徒もいますが、控えめで大人しい生徒もいます。そんな生徒も、学校でさまざまな体験をすることで成長し、本来の自分を出せるようになっていきます。自分に自信が持てない子も、是非カリタスで自分の良さを見出してほしいと思います。

社会の課題に主体的に取り組み、
自分の生き方を探究するi-Time

「i-Time」は、2019年度からスタートした探究活動の時間です。中1から高2まで、様々なテーマに沿って「問う」「調べる」「考える」「伝える」「振り返る」という探究サイクルを繰り返します。

探究のテーマや方向性には、カトリック学校である本校らしさがあらわれているように思います。例えば中1では「共生社会」をキーワードに、様々な活動を通して「多様な人々が安心して共に暮らせる社会を作るためには何が必要か」を考えます。高1ではグループごとに関心のある社会課題を選び、様々なプロジェクトを通して解決への道筋を探ります。i-Timeでは、実際に社会と関わる機会も大切にしています。中3、高1ではグループのテーマに応じて、校外のイベントに参加したり、実地調査を行ったり、関連する団体の方にインタビューをしたりします。そうした経験は生徒の視野を広げ、大きな「学び」をもたらしてくれます。

また、i-Timeはキャリア教育という側面も持っています。広く社会に目を向け、自分自身を見つめることを通して、一人ひとりが自分の進路を考えます。特に中2では、職業探究や学問探究を通して、将来の自分を具体的にイメージする機会をつくっています。こうした活動を通して、これからの時代に必要な「自ら学び、探究する」力を身につけるとともに、他者のために行動し、社会をよりよいものに変えていけるような人に育っていって欲しいと考えています。

i-Time委員会主任|森匡史先生

取材日:2022.9.2