少人数制の理科実験で、
授業で学んだ知識を深めていく

浅野中学校・高等学校

少人数制の理科実験で、授業で学んだ知識を深めていく

浅野中学校・高等学校は、横浜に近い利便性の良い場所にありながら、豊かな自然環境も併せ持つ県内屈指の進学校だ。努力を重ね、挑戦していく心を育てる教育の下、生徒一人ひとりの興味・関心を深める様々な取り組みがある。理科教育では、中3で実験専用の独自の授業を設置している。高1物理担当の近藤祐介先生と、高2物理担当の庄子真生先生、高2化学と中3の理科実験を担当する定光勇太先生、高3化学担当の德山直先生に、中3の理科実験を取り入れた経緯や、その特徴について話を聞いた。


―中3で独自の理科実験を取り入れた経緯についてお聞かせください。

庄子 6年一貫のカリキュラムで学ぶ本校では、理科は中2の段階で中学の物理と化学が終わり、化学は中3から高校の学習内容がスタートします。高校の学習が始まりつつある中3の段階で中学の内容を復習し、高校へとスムーズに移行していくために、週1コマの独自の理科実験を実施。物理・化学・地学の多彩な実験を行っています。1学級45人※の半数にあたる22~23人の少人数制で、教員2~3人がサポートしながら実験を進めています。※25年入学生から1学級40人に変更

徳山 2020年の導入当初はコロナ禍で様々な制限がありましたが、オンライン授業に向けて、実験の段取り説明や結果解説の動画を制作するなど工夫を重ねました。その経験が教員のスキルアップにつながりました。中3の理科実験は、実験内容と教員の専門分野が一致しない場合もありますが、理科の全教員が変わらずに対応できる仕組みがあります。

庄子 真生先生

―中1、2の授業で行う実験と、中3の理科実験はどう違うのでしょうか。

近藤 中1・2は4人1組で実験を進めますが、中3の理科実験は2人1組で行います。中3では一人ひとりが実験の全工程を担うようになるので、中1・2で実験への姿勢や器具の操作方法など、基本的なことをしっかり身に付けるように指導しています。

定光 中3の理科実験では、ホールピペットやビュレットなど中1・2では扱わない専門的な器具を使う実験も行います。高1の実験で使用する器具なので、正しい扱い方について中3の段階でしっかり身に付けていきます。

近藤 祐介先生

庄子 中1・2は教科書に出てくる基礎的な実験が中心で、中3は高校で学ぶ内容が多くなります。難しいところは丁寧に解説しながら進めています。例えば、数値を測定する物理の実験では、自分でアナログの機械を読み取りますが、そうして測定した数値には誤差が生じます。その分を考慮する有効数字を用いて真の値を考察しています。

徳山 理科は高1まで必修で、高2では文系理系での選択必修となります。共通テストを受ける文系の生徒でも高3で化学を選択する生徒も少なくありません。大学の入試問題を解いているときに、中3の理科実験で学んだ内容を思い出すこともあるようです。理科実験が力になっていると感じます。

―生徒に人気がある実験などについて教えてください。

徳山 花火の元になる炎色反応のような教科書に載っている実験も、意外な発見があるので人気があります。インクが水に広がっていく様子を、条件を変えながら観察する実験では、水を静かに置いたときと、そうでないときを比較すると、結果が大きく異なります。理屈ではわかっていていることも、実際に確認することで新しい発見につながり、本質的な実感を得られる体験になっているようです。

定光 原子や分子など目に見えない世界を扱う化学は、授業で理論を学ぶだけでは限界がありますが、分子模型を使う実験で可視化すると、理解を深めやすくなります。また、自分の頭の中で想像している世界と、実際の現象を比べていくことも、化学の実験の面白いところです。重曹の水溶液を加熱して炭酸ナトリウムを作り、フェノールフタレイン液で確認する実験を行うと、重曹の水溶液は少し色が付くだけですが、アルカリ性が強い炭酸ナトリウムの水溶液は真っ赤になります。これは中学受験で勉強済みの内容ですが、実際に実験してみるとまったく異なる色になるので驚く生徒は多い。みんな楽しみながら、実体験を積み重ねています。

德山 直先生

近藤 物理では、高1で学ぶ運動方程式などを、中3の理科実験で事前に学ぶことで、高1からの学習につなげています。また、物理の実験では不確かな値が含まれるデータの扱い方も学習します。アナログな電流計と電圧計の数値を自分の目で読み取っていくオームの法則の実験では、読み取った測定値に必ず不確かさが含まれており、その測定値どうしの計算から得られる結果には、やはり不確かさが含まれることを確認します。測定した数値を可視化して法則を検証しながら、物理の基礎を学びます。

庄子 地学では、校舎を建てる時に採取したボーリング資料を使用した実験が人気です。自分が通っている学校について理解を深めながら、周辺地域の地層についても学習します。

徳山 生物では、中2で行う豚の目の解剖は人気があります。また、本校のキャンパスは季節ごとに様々な植物が芽吹く、観察に適した環境があります。生物の実験では外で観察する機会も多く、生徒たちは真剣に取り組んでいます。

定光 勇太先生

―浅野の魅力を教えてください。

定光 多彩な部活動が積極的に活動しており、一人ひとりが挑戦したいことに取り組める環境があります。理科は物理・化学・生物・地学の4分野それぞれが部活動として独立しています。私は化学部の顧問をしていますが、授業で習った内容を部活動で実験して確かめたいという要望も多いです。授業では扱わない実験も部活動の一環で行っており、やりたい実験は一通りできると思います。

近藤 物理部にはプログラミングが好きな生徒が多く、自分たちでゲームを制作しています。また、物理オリンピックに挑戦する生徒や、スピーカーを一から組み立てる生徒など、同じ趣味を持つ生徒が集まる、楽しい部活動です。皆、同じように受験勉強を頑張ってきた生徒ばかりなので、居心地がいいと思います。

庄子 理科実験室が5つあり、顕微鏡も一人一台用意されているなど、充実した施設・設備も魅力です。また、本校はスポーツ系の部活動も活発です。進学校としては珍しいボクシング部はインターハイの常連で、今年も出場が決定しました。

徳山 多様な生徒がそれぞれに満足できる環境があります。校舎の目の前にはJRと京急の線路があり、鉄道が好きな生徒にとって魅力的な環境ですし、本校の特色の一つである図書館は約6万冊の蔵書を備え、生徒の憩いの場になっています。毎年9月に実施している文化祭では、理科の各部活動の発表もあるので、ぜひ注目してほしいと思います。

取材日:2024.7.10