施設・設備を整え、生徒が自主的に
活動できる場所を数多く用意
城北中学校・高等学校
城北中学校・高等学校は1941年、「人間形成と大学進学」を教育目標に設置された伝統ある男子校だ。約4万㎡の広大な校舎には、生徒たちの学園生活を支える様々な施設・設備がある。中でも、図書館は都内の学校で屈指の規模を誇るという。生徒たちの指導にあたる図書館指導部長・村上善美教諭に、図書館の多彩な取り組みについて話を聞いた。
都内の学校の中で最大規模を誇る城北の図書館には、蔵書6万冊以上、雑誌50種類以上が取り揃えられている。蔵書の中には、高名な教育者でもあった創立者が所有していた、学術的にも貴重な本を集めた「深井文庫」などもある。昨年の年間貸し出し数は約7000冊だったが、今年は約1.5倍の推移で伸びているという。図書館指導部長の村上善美教諭がその理由について、こう話す。
「今年の中1から朝読書を取り入れたことで、読書の習慣ができてきたこともあると思います。また、返却日になっても本を返していない生徒への督促指導を強化しました。きちんと返すことで後ろめたい気持ちをなくし、また図書館で本を借りてほしいとの考えからです」
図書館は校舎の中心の、生徒が立ち寄りやすい場所にある。1日平均約400人、試験前には5~600人が図書館を利用している。
「すべての生徒が図書館で心地よく過ごせるよう、様々な取り組みがある。中1の1学期に行われる図書館オリエンテーションでは、図書館の利用方法を教えるなど、読書を推進する活動を実施。また、生徒の声を直接聞く体制があることも、特色の一つだ。6月の巡回図書展示では、出版社から持ち寄られた本の中から、図書館に置く本を生徒自身が選べる。さらに、本の選定のために年1回、全校生徒にリクエストアンケートを実施して生徒のニーズを調査するなど、できる限り生徒の要望に応えているという。「最近は、プログラミングやコンピュータに関する本の要望が多くなっています。ICT環境を整備し、iPadを利用する授業が増えていることで、興味を持つ生徒が多いのだと思います」(村上教諭)
教員と図書館を利用する生徒たちの間に立って活動する図書委員は、図書館の業務に欠かせない存在だ。各クラスから2人選出され、昼休みや放課後、図書館のカウンターで本の貸し出し業務に従事している。
この他、10~20人の有志が集まって行う図書委員会活動もある。年2回発行している機関紙「読書のすゝめ」の編集や文化祭での古本市、書店や取次店への訪問、他校との交流など、活動内容は多岐にわたる。図書館に置く本の選定にも積極的に関わっている。教員側の視点に立ち、他の生徒に読んでもらいたい本について考える機会になっているようだ。
城北では最近、各教室に大型モニターを設置するなど、ICT環境の整備が進んでいる。図書館にも廊下側にモニターを置き、本の紹介動画などを流している。また、館内に置かれた投書箱には、図書館に置いて欲しい本のリクエストのほか、生徒の個人的な悩みや相談など、さまざまな投書がある。その一つひとつに村上教諭が回答し、廊下に張り出している。図書館に縁がない生徒にも興味を持ってもらえるよう、きめ細かな工夫がこらされているのだ。
最後に、城北の魅力について村上教諭がこう話す。
「図書館だけでなく、グラウンドや武道館、プール、芸術棟、理科実験室など、本校の施設は十分な規模があるものばかりです。充実した環境の下で、授業や部活動に勤しむことができるのは大きなメリットでしょう。中でも、図書館は教室と違って、教員からの評価を受けない数少ない場所の一つです。本に興味がなくても、居心地のいい場所の候補の一つとして活用してほしいと思います」
COLUMN
多様な生徒が集まり、ともに活動する中で
多くの人に読書の楽しさを伝える
図書委員会が従事している業務の中で、特にやりがいを感じる活動の一つが、城北学園図書委員会誌「読書のすゝめ」の発行だ。1987年6月発行の第1号から30年以上に渡って受け継がれている「読書のすゝめ」は、年2回委員会が作成する伝統的な機関紙だ。担当者が自由に題材を決め、お勧めの本について紹介。あまり本を読まない人にも手にとってもらえるよう、わかりやすく本の魅力を伝えている。
紹介する本は小説や経済書、辞書など様々だ。原稿を執筆し、推敲作業を重ね、印刷会社に入稿するまで、すべて委員会の手で行われる。また、図書委員会が中心となって行う最大のイベントが、文化祭での古本市だ。教員や生徒が持ち寄った本や、図書館で不要になった本を集め、無料で配布するイベントだ。毎年3000冊ほど集まるという。冊数を把握し、ジャンル別に分け、レイアウトを考えてポップを作るなど、古本市の開催に向けて各自が主体的に取り組んでいる。
図書委員会は、本が好きな生徒ばかりではないようだ。先輩から勧誘されてなんとなく参加しているうちに居心地が良くなり、活動を続けている生徒も多いという。いろんな生徒が集まることで、本について多様な視点で捉え、見聞を広げる機会にもなっている。これからの目標について、委員長の仙田さん(写真奥)はこう話す。
「機関紙の発行や古本市以外にも様々な活動があるため、図書委員会の生徒は昼休みや放課後など、多くの時間を司書室で過ごしています。そのため、ハードな活動と捉えられてしまうようで、常に人手不足に悩んでいますが、この活動を途切らせず、後輩につないでいくというのが私の一番の目標です」
取材日:2018.9.14