理科を素材に学びの基礎力を築く
新たな教育アプローチ「Active Science」

麴町学園女子中学校・高等学校

生徒が楽しみながら実践的な英語を身につけるための独自の教育メソッド「アクティブイングリッシュ」を実施し、大きな成果を上げている麴町学園女子中学校高等学校。2021年春からは、理科の授業を通して広く学びの土台を養う「ActiveScience」がスタート。生徒たちからの評判もよく上々の滑り出しとなった。中心的立場で「Active Science」に取り組む城之内悦子先生と、特別顧問を務めるジャパンGEMSセンターの主任研究員の鴨川光先生に話を聞いた。


―「Active Science」導入のきっかけを教えてください。

城之内 中高の理科は教科書の内容を学ぶことが中心になりがちですが、身の回りの動植物や自然現象など、理科は本来とても身近なものです。理科に苦手意識のある生徒たちに、身近なところから実験や観察を通して理科を楽しんでもらいたいという思いがありました。さらに、他者とのコミュニケーションや表現、自己理解、ものごとの考え方などを身につけることができるような学びを実践するために、中学1年生からの理科の授業で、新たに「Active Science」という取り組みを始めることにしました。

―具体的にはどのような取り組みなのでしょうか?

城之内 カリキュラムとしては、中学1年生の週4の理科の授業のうち、2時間分を連続した授業時間にしました。まとまった時間があることで、実験や観察を中心に、分析、考察といった作業をじっくり行うことができ、自由なアイデア出しやグループでの話し合いといった生徒主体の授業がつくりやすくなりました。授業づくりは、外部の教育機関であるジャパンGEMSセンターと連携して取り組んでいます。

城之 内悦子 先生

鴨川 私たちは、麴町学園女子の「豊かな人生を自らデザインできる自立した女性」を育てたいという思いを軸に、コンセプトづくりから話し合いました。単に授業のプログラムを提供するのではなく、同校の生徒に合った授業づくりの提案や教師のトレーニング、生徒に向けての講演会などを行いました。「Active Science」スタート後も、生徒の反応や進捗などの情報共有し、よりよい授業づくりを続けています。

「ちがい」を受け入れ「まちがい」を活かす学び

―「Active Science」で大切にしているポイントは何ですか?

鴨川 「ちがい」と「まちがい」を活かすことです。生徒は一人一人、得意不得意が異なり性格もちがいます。「こうでなくてはならない」という画一的な評価をやめ、多様性を生かしたクラスづくりをすること。そして、たとえば実験に失敗するなどまちがった結果が出た時に、そこから学ぶポジティブな姿勢を実践していくことです。

城之内 具体的には、生徒の意見を否定しないことを大切にしています。生徒が立てた仮定が荒唐無稽なものに思えても、生徒なりの理由がきちんとあれば評価するなど、「なぜ」「どうして」を考えた学びを尊重しています。

―1学期を終えての授業の手応えや生徒の反応はいかがですか?

城之内 生徒たちには好評で、毎時間楽しく取り組んでくれました。2学期の授業を楽しみにしているという声もありました。基本的な知識の定着についても従来の授業よりもよい結果でした。調べたり、話し合ったり、発表したりという生徒が自主的に活動する時間が増えた分、知識の定着がおろそかにならないかという不安は若干あったのですが、目的意識を持った活動から得る知識は単に教科書を読んで得る知識よりもしっかり身についたのではないでしょうか。また、授業の時に「先生、ここテストに出ますか?」という質問がほとんどなかったことが印象的でした。

鴨川 授業が、生徒の中で、テストのためにやる「勉強」ではなく、「なぜ」「どうして」を知るために学ぶ、Learningになっているのだと思います。テストにとらわれず、好奇心を育てて、のびのびと学ぶ姿勢を身につけることで、理科にかぎらずすべての学びの基礎を築くことができるのです。

鴨川 光 先生

好奇心や興味関心をともに学びを楽しむ気持ちを育てる

―「Active Science」の今後の展望があれば教えてください。

城之内 スタートしたばかりで手探りの部分も多いですが、生徒と一緒に学ぶ楽しさを感じつつ授業づくりに取り組んでいます。今後、生徒から「やってみたいこと」のリクエストがあれば、一緒に考えて新たな授業をつくっていきたいですね。

―最後に受験生へのメッセージをお願いします。

鴨川 中学受験のため必死に「勉強」に取り組んでいる生徒も多いと思います。ただ、学ぶことは本来とても楽しいことです。中学からぜひ新しい学びをスタートしてください。

城之内 「なぜ」や「どうして」は自分の経験の中からしか生まれません。「Active Science」や「アクティブイングリッシュ」を通して、たくさんの経験をして、考える力、表現する力を身につけてください。

Active Scienceでの授業例

昆虫のからだのつくりを理解するために、アリを詳しく観察。基本的なつくりだけでなく、あし先がギザギザしている理由や触覚の役割などについても話し合い、リアルなイラストにして理科室の壁に展示。手づくりでのりをつくるために、小麦粉とコーンスターチと塩と重曹を準備。4種類の粉の性質を調べながら、自由に混ぜたり水を加えたりして、試行錯誤してのりのような粘着性の物質を完成させる。

取材日:2021.8.7