選択授業「地域デザイン探究」を通して世界と
自分のつながりを意識し豊かな体験で社会性を育む

青山学院中等部

未来を拓くサーバント・リーダーの育成を目指す青山学院中等部。3年生を対象に、週2時間実施される「選択授業」では、各教科の教員がそれぞれの専門性を生かした講座を展開している。選択授業の一つである「地域デザイン探究」は、教科の枠を越え、身の周りの問題や社会課題の解決方法を、さまざまな体験を通して探究する。2学期最初の授業を見学した上で、この授業を担当する社会科の三好文子先生と、国語科の松島淳先生に話を聞いた。


青山学院中等部では、幼稚園から大学、大学院を擁する一貫校の強みを生かし、社会で活躍する力を養う教育を行っている。1971年の導入以来、50年以上の歴史を持つ選択授業では、3年生を対象に、教員の専門分野を生かした講座を1年間開講している。その一つである「地域デザイン探究」は、身の周りの問題や社会課題について、デザインの力を使ってみんなが幸せになる解決策を探究する講座だ。今年は24人の生徒が受講している。もともと社会科の三好文子先生が社会課題や、生徒一人ひとりが関心を持ったテーマを探究する講座を担当していたが、今年から国語科の松島淳先生が加わり、より体験を重視した講座に生まれ変わった。国語科と社会科の2人の教員が共同で実施するメリットについて、松島先生がこう話す。

「国語科では自分の意見をまとめることや、プレゼンテーションを通して、言語活動の基盤となる技能や思考力の獲得、表現力の向上などを目指しています。社会科では、社会課題に関心を持つとともに、社会と自分のつながりについて考える力を身につけます。教科横断的な学習や社会との接続を通して、コミュニケーション力や協調性などの非認知能力も育んでいきたいと思います」

1学期は「わたし×渋谷、わたし×中等部」をテーマに、企業連携や校外学習を通して人が集まり楽しむための工夫や仕掛けを学んだ。世田谷区の三軒茶屋の町おこしをしている企業とコラボレーションした勉強会を実施。イベントの作り方や外部の企業や人と連携する方法を学んだ。また、希望生徒を対象に、その企業が開催しているマーケットも見学した。三好先生がこう話す。

「週末にはファーマーズマーケットが学院の目の前で開催されており、目にしたことのある生徒も多いです。イベントがどのような仕組みや意図で運営されているのかを、間近に感じる機会になりました。出店者が製品に誇りを持って販売している姿を見て、食が環境や健康に与える影響に関心を持つ生徒もいました」

三好 文子 先生

さらに、校外学習で東急不動産が展開する「渋谷謎解き街歩き」という体験型のゲームにも参加。クイズの答えが示す場所を回りながら、街を散策した。謎解きを通して青山学院がある渋谷の歴史や文化を学ぶとともに、参加者に地域の魅力を知ってもらうために、どのような工夫が施されているのかを考察した。2学期最初の授業では、謎解きゲームを企画した東急不動産の社員が授業に加わり、企画の意図や、同社が進めている渋谷の地域おこしの取り組みについて講演した。「普段出会う機会がない多様なフィールドで活躍する社会人と出会う経験からさまざまなことを学び、将来に役立ててほしいです」と三好先生は語る。

2学期は、JICAへの訪問や、フィリピンでの支援活動について知る機会も計画している。松島先生がこう話す。「青山学院が長年取り組んでいる途上国への支援は、2学期のテーマである『わたし×世界、わたし×日本』と結びつきます。日本と世界の問題は密接につながっていますが、いきなり遠い海外の話をしてしまうと自分たちとの関連性を見つけられず、実感を持てない生徒もいるので、まずは身近な地域やエピソードから理解を深めていきます」

松島 淳 先生

生徒は、企画の運営にも挑戦している。コロナ禍以降、利用者が減ったカフェテリアを盛り上げる仕掛けについて、4つの班に分かれて検討。世界の多様性を体感できる空間づくりを目指す班や、ソファーを設置してリラックスできる憩いの場を作る班など、ユニークな取り組みが進んでいる。1学期の勉強会や、渋谷の謎解きゲームの参加で学んだことを生かし、参加者が没入できる仕掛けづくりに磨きをかけている。これらの企画を今年度中に実施する予定だ。

3学期は、生徒一人ひとりがこれまでの取り組みのなかから関心があるテーマを取り上げ、まとめる予定だ。仮説を検証しながら自分なりの答えを導き出すという探究のプロセスを身につけ、卒業後の高等部の探究活動にも生かしていく。

最後に、受験生や保護者に向けて、先生たちがこう話す。「青山学院には、キリスト教教育に基づく社会活動の精神があります。渋谷という出会いに恵まれた場所で、社会性を自然と身につけることができる環境です。豊かな社会体験の基盤となる学力の定着にも力を注いでいます。魅力ある青山学院で一緒に学びましょう」(松島先生)

「多様な友達に出会える環境は、幼稚園から大学、大学院を擁する青山学院ならでは。高校受験がない環境だからこそ、時間の使い方を自由に決めることができます。さまざまな学びや体験を通して興味関心の種をまき、育んでいきたいと思います」(三好先生)

Report 地域デザイン探究

1学期のテーマは「わたし×中等部」だ。コロナ禍以降、活気が失われたカフェテリアを盛り上げるために6つの班に分かれて企画づくりに取り組み、プレゼンテーションを行った。今回の取材で見学した2学期最初の授業では、アイスクリームをきっかけに交流を深める企画を進めている班が発表を行った。この班は、廃棄される予定の食材を使ったアイスクリームを販売している企業を調査。実際に販売店のイベントに足を運び、美味しい製品を作るだけでなく、環境への負荷に配慮した製品づくりを学んだ。その体験をこの企画に生かしたいと語った。授業の後半には、東急不動産の真野知也さんと、同社が運営するコミュニティアプリ「SHIBUYA MABLs」の学生クルーである青山学院大学4年生の平川こころさんが加わった。真野さんは都市開発の視点からみたイベント運営について講演し、街づくりの魅力や仕事にかける思いを語った。平川さんは、自ら働きかけて海外インターンシップやイベント運営に携わった体験談を紹介し、生徒にも人との出会いを大切にしてほしいと話した。授業を受けた生徒からは、課題を乗り越える方法や、物事に取り組む姿勢についてなど、多くの質問があった。積極的に意見交換する生徒たちが印象的だった。

取材日:2026.9.9