フィールドワークを取り入れた地理教育で視野を広げ、
興味を伸ばし、卒業後も続く学びへの意欲を養う
成城中学校・高等学校

中高一貫の男子校である成城中学校・高等学校は、1885(明治18)年の創立以来実験・観察を通した学びを重視してきた。その一環として伊豆大島や福島、カンボジアでのフィールドワークを実施している。地理教育を担当し、フィールドワークの企画と運営に携わる社会科の村田裕先生に話を聞いた。
―約10年前からフィールドワークに取り組んでいます。
フィールドワークを通して本物に触れることで、教室の中だけでは分からないことを五感で感じ取り、学びを深めてほしいと考えています。長期休暇を利用した高校のフィールドワークは、伊豆大島、福島、カンボジアの3カ所で実施。事前学習と組み合わせて行っています。
約10年前にスタートした春の伊豆大島でのフィールドワークは、噴火から約30年が経過した三原山を取り巻く植生の変化や溶岩の特徴、地元の人々の暮らしへの影響を調査します。2013年に発生した土石流被害の痕跡が何年も残っている様子を目の当たりにする体験は、授業だけでは得られない学びとなっています。
また、福島のフィールドワークは、テーマを変えて不定期で開催しています。東日本大震災の後、郷里への帰還がかなうまで10年を要した大熊町のコミュニティや、現地でキウイ栽培に取り組む企業、教育支援に携わる方々など、さまざまな人から被災地の復興について話を伺います。復興を支えている大人と交流することで、復興への理解を深めていくとともに、生徒のキャリアに対する視野も広がっていきます。
夏休みを利用したカンボジアのフィールドワークでは、自分たちで先行研究を読み、事前に研究の目的を設定した上で現地調査を行います。今年は、トゥクトゥクのドライバーへのインタビュー調査を実施しました。英話や翻訳アプリ、筆談などでコミュニケーションをとりながら調査を進め、カンボジアの交通事情や客層、顧客との連絡手段などについて理解を深めていきました。帰国後は論文を執筆し、学会等で発表します。

カンボジアでは、地雷原で生活する人々にも話を伺い、撤去する様子を視察しました。地雷を取り除くときの爆風の大きさに生徒は圧倒されていました。また、多国籍の選手が集まるプロサッカーチームと交流する機会もありました。最初は消極的な生徒もいましたが、だんだんと打ち解けて身振り手振りでコミュニケーションをとって楽しむ姿がみられるようになりました。短い時間ではありましたが生徒たちの成長を感じました。
―生徒の様子はいかがですか。
意欲的に取り組んでいる生徒が多いと感じます。例えば、フィールドワーク先で質問する機会があると、みんな積極的に手を挙げています。また、帰国後の学会での論文発表では、大学教授から鋭い指摘を受けることもありますが、生徒たちはそれに対して前向きに改善する姿勢がみられます。普段の授業では教員が知識を伝えることが中心になる一方で、フィールドワークでは生徒が知りたいことについて自ら学ぼうと動く様子があり、いつもとは違う生徒の姿に手ごたえを感じています。
先行研究を読み、課題を見つけて調査・分析するフィールドワークの経験は、卒業後、大学での学びにも生かされているようです。「成城のフィールドワークで取り組んだことが大学で役に立っている」と報告してくれた卒業生もいます。
フィールドワークを始めて約10年。当初は教員が生徒に参加を呼びかけていましたが、年々、熱心な生徒が増えていると感じています。最近は同じ研修に何度も参加する生徒もいます。私が顧問をしている地理研究部では、研修先を部員たちが選んでいるのですが、将来的にはフィールドワークでも行き先の選定に生徒の意見を反映していきたいと考えています。
―中学の授業でもフィールドワークを行っているようですね。
中1と中2では、夏休みの課題で環境地図を作成します。自分が住んでいる地域の環境について調べ、模造紙1枚分の地図にします。型にはめて画一的なテーマを強制するのではなく、生徒の興味を引き出せるように意識して指導しています。この取り組みの中で、自分たちで好きなものを見つけてそれを深掘りしていく力を養ってほしいと思っています。生徒たちは、災害時に危険な場所やセミの抜け殻がある場所など、毎年自由なテーマで地図を作っています。作品は、「私たちの身のまわりの環境地図作品展」という世界規模のコンクールに出品しており、さまざまな賞を受賞。毎年高い評価を受けています。この取り組みに夢中になり、夏休みの楽しみになっていると話す生徒もいます。
また、中学では、春と秋に開催している「中学行事」で、学年ごとに上野や横浜などのエリアを訪れ、半日かけて散策します。事前学習で地域の風土や歴史を学び、当日は班の仲間とともに、地図を片手に数カ所のチェックポイントを回ってゴールまで歩きます。新入生は、離れた地域から通う生徒も多いので、成城中高の周辺を散策。新しい仲間と一緒に取り組むことで、クラスの親睦を深めるきっかけになっています。
―成城中高はどんな学校でしょうか。
一人ひとりの個性はさまざまですが、背中を押すと、初めてのことにも一生懸命に取り組み、成長してくれる生徒が集まっている学校です。本物に触れる機会は学校行事にもあります。全学年対象の「視聴覚行事」では、毎回ミュージカルや落語などテーマを変えながら鑑賞します。こうした授業だけでは得られない体験を通して、本校で大きく成長してほしいと思います。
取材日:2026.8.21
