自ら知識を獲得する姿勢を養う失敗を
前向きにとらえ、生かしていく技術科の授業
攻玉社中学校・高等学校

1863(文久3)年の創立以来、校訓「誠意・礼譲・質実剛健」を生かした教育を行っている攻玉社中学校・高等学校。毎年、旧帝大をはじめとする難関国公私立大に数多くの合格者を出す進学校だ。大学入試に直結する5教科の教育はもちろん、実技科目にも力を注いでいるという。その一つがものづくりに取り組む技術科の学びだ。授業を担当する技術科の竹内優太先生に話を聞いた。
攻玉社では、技術科の授業を中1と中3の2年間で実施している。1年次は、材料を寸法通りに加工しながら、ものづくりの楽しさを実感する授業が中心だ。まずは、角材を薄く削って箸を製作する、アナログでシンプルな作業からスタート。1年次の後期には自分が作りたいものをコンピュータで設計し、1枚の杉板を使って作り上げていく。授業で心がけていることについて、技術科の竹内優太先生がこう話す。
「知識は教員が一方的に伝達するものではなく、生徒が自ら知りたい、学びたいと思ったときに自然と獲得されていくものです。ですから、生徒が手を動かしながら、自分で知識を構築していく学習環境を整えています。1年次はのこぎりやカンナなどの木工道具の使い方を含めてしっかりレクチャーしますが、3年次になると指導は最低限にしています」
3年次は、生徒が自由に考え、自ら学ぶ姿勢を身につけていくことを念頭に置いて授業を行っているという。その取り組みの一つが、橋の模型を製作して、その耐荷重を競う「ブリッジコンテスト」だ。一人ひとりが平面の橋を造るところから始めて、その内容を実習記録にまとめていく。その後、4人1組のグループで立体の橋を完成させて、破壊実験を行い、耐えられる重さを測定する。
このブリッジコンテストの目標は三つある。丈夫な橋をつくるための知識を生徒自身が構築すること。失敗してもさらに丈夫な橋へと作り直す姿勢を身につけること。協働する中で0から1を生み出す経験をすることだ。
「橋の構造に関する書籍や、先輩たちの実習記録などを教室内に置くことで、生徒自身が自由に学べるようにしています。学び方は人それぞれ。異なる経験をした人が集まると、新たなアイディアが生まれやすくなりますが、ブリッジコンテストでも平面の橋を造ったときに得た知識を互いに共有し、集約していくことで、新しいアイディアを生み出していく姿がみられます」と竹内先生。
3年次の後期には、プログラミングにも挑戦する。小さなコンピュータを搭載した教材を用いて、信号機の模型を制御する、今年から始まった取り組みだ。幅広い学びの中で大切にしていることについて、竹内先生がこう話す。
「まずは、技術が人間や社会を豊かにしていることを理解してほしい。そして、その技術を生み出した作り手たちに敬意を払い感謝できる人になってほしいという思いがあります。他の教科はそういう機会が少ないので、ものづくりを通してこうした技術観や労働観を養ってほしいと思います」
多様な生徒がデジタルものづくりに携わる
竹内先生は、授業以外でも自由にものづくりができる機会を設けている。中3の探究型プログラム・水曜講座や、放課後に不定期で実施している高校生向けの特別講習では、「デジタルファブリケーション入門」講座を開講。3Dプリンターやレーザーカッターを使い、防災スプリンクラーの再現や、コースター、キーホルダーなどのデジタルものづくりを体験できる。
「木材などを使用したアナログなものづくりの場合、失敗すると一から作り直すことになりますが、デジタルものづくりは自分の頭の中にあるアイディアをコンピュータの中で表現していくため、失敗してもコンピュータ上で修正するだけ。試行錯誤と修正のプロセスを高速化でき、何度でもチャレンジできます。失敗を繰り返すことで新しいアイディアも生まれやすく、0から1を作る力も磨かれます」(竹内先生)
また、多くの生徒がデジタルものづくりに取り組めるように、技術室を開放。理化学部は、電磁誘導に関する実験で使用する器具を3Dプリンターで製作。宇宙エレベーターロボット競技会に向けて競技用の道具を作った生徒もいる。また、理化学部の生徒が「斜面を下る車体の加速度」の研究を行う際に、3Dプリンターで実験装置を製作。その研究が日本学生科学賞東京都大会の努力賞を受賞した。
竹内先生は、3Dプリンターを使った教材開発にも着手しており、今後は通常の授業でも生かしていく予定だという。竹内先生がこう話す。
「技術科が大切にしているのが、試行錯誤と修正を繰り返すこと。ものづくりでは、うまくいかない経験を必ず味わいますが、それは人生も同じです。困難にぶつかった時、思い通りにいかない時こそ、その壁をどう乗り越えていくのかを考える。それが、成長するきっかけになります。ものづくりを通して、失敗を前向きに楽しむ姿勢を身につけ、これからの人生に生かしてほしいと思います」
東京科学大学とのSTEAMワークショップを開催
今夏、高大連携企画として東京科学大学によるSTEAMワークショップを開催。高1〜3の20人が「QRコードの解読」「3Dホログラムをつくる」の2つのワークショップに挑戦しました。高校では工学に触れる機会が少ない中、情報工学と電子工学の学びを体験するこのワークショップは、大学での学びを体験する良い機会になりました。
ワークショップ後には、大学生との交流会もあり、受験勉強や大学生活についてなど、学生のリアルな話を聞くことができました。自分の進路を見通す機会になった生徒もいるようです。東京科学大学が近隣にある恵まれた環境のもとで、これからも様々な企画を実施していきたいと思います(竹内先生)。
取材日:2026.9.4
