成長の原動力となる“つながり”を生み出す
進路指導「縦のつながり」が生徒の未来を拓く
本郷中学校・高等学校

大正11(1922)年に開校し、創立103年を迎えた本郷中学校・高等学校。文武両道を体現し、東京大学や京都大学をはじめ、難関大学への進学実績でも高く評価されている。その背景には、同校の伝統ともいえる「縦のつながり」があるという。詳しい取り組みについて、進路指導部長の小松洋平先生に話を聞いた。
―本郷中学校・高等学校の「縦のつながり」とはどのようなものでしょうか。
一つに、「在校生と卒業生のつながり」があります。本校では、難関大進学セミナーやOB講演会、部活動など、学校生活のさまざまな場面で卒業生が在校生を親身になってサポートしています。生徒にとって自分と年齢の近い、同じ学び舎で過ごした先輩は、親しみやすくて心を開ける存在です。と同時に、少し先を歩くロールモデルであり、憧れの対象でもあります。そんな先輩たちと接すると、生徒の心に「あの先輩のようになりたい」「自分にもできる」という意欲や自信が芽生えます。それが勉強や部活動のモチベーションとなって学力向上や人間的成長につながり、ひいては難関大学への進学実績にも結びついていると感じます。
―難関大進学セミナーで、卒業生はどのような役割を果たしているのですか。
東京大学、一橋大学、東京科学大学、早稲田大学、慶應義塾大学などへ進学した卒業生が講師となって、勉強のアドバイスや合格への道のりについて話をします。ついこの間まで受験を闘っていた大学1年生が中心で、2026年は約30名が講師を務めてくれました。
セミナーの形式は学年によって異なり、中学3年生は講堂に集まって話を聞く、高校1年生は進学コースと特進コースに分かれて話を聞く、高校2・3年生になると志望大学の系統別に分かれて座談会形式で話すというように、志望校が具体化するにつれて対話の密度も濃くなります。生徒が卒業生に本音で相談・質問できる場となるよう、私たち教員はあえて同席しません。講師を務める卒業生には、きれいにまとまったサクセスストーリーではなく、大学進学までにどのような苦しみや葛藤があったのか、それをどう乗り越えたのかという点にフォーカスして話をしてほしいと伝えています。
―卒業生の言葉は、生徒たちにどのように作用していますか。
実体験に裏打ちされた卒業生の言葉は非常に大きな力を持っていて、生徒の心に驚くほど速く深く浸透していきます。その様子は「心が動く」という表現がぴったりです。セミナー後に生徒たちのアンケートを見ると、「壁を乗り越えるためにこうしよう」とか、「今日からこの勉強法を取り入れよう」とか、具体的な行動につながるコメントが多く見られます。一般論ではない、リアルそのもののアドバイスだからこそ、生徒の心が動いて即行動につながるのでしょう。これは、教員からの働きかけとは異なる、卒業生だからこそ届けられる力だと思います。
―OB講演会にはどのような卒業生が来られるのですか。
中心となるのは、すでに社会人になっている卒業生です。現在の仕事やこれまでのキャリアについて話をしてもらいます。卒業生の職業や業界は、新聞社、メーカー、IT、医師など多種多様です。プロサッカークラブの最高執行責任者を務める卒業生を招いたこともあります。
こうした出会いを通して生徒たちに知ってほしいのは、世の中には多様な生き方や働き方があるということです。そして、大学進学がゴールではなく、その先の未来で自分はどうなりたいかを考えるきっかけにしてほしいと思います。将来の職業や生き方を考えることは、進路選択の強力な羅針盤になります。大学のその先をイメージすることで、ただ東大に行きたい、京大に行きたいではなく、「だからこの大学に行くんだ」と進学動機が明確になって、より主体的に日々の勉強に取り組めるようになると思います。
―部活動にも卒業生のサポートが活きているそうですね。
はい。単に部活に顔を出すということではなく、生徒の技術指導やメンタル面のサポートにしっかり関わってくれています。一例を挙げますと、サッカー部や野球部、ラグビー部などでは卒業生が外部指導員として日々の練習に加わっています。大学の授業や仕事の合間をぬって朝練に参加したり、合宿に駆けつけてくれたりする卒業生も珍しくありません。
本校の教育方針の一つに「文武両道」がありますが、学業と部活動の両立は容易いことではなく、生徒にとって切実な問題です。そんなとき、自分と同じ部活動に打ち込みながら勉強も頑張って希望の大学に進んだ先輩がいるという事実や、その先輩からの温かなアドバイスは生徒の強い支えになります。
―「縦のつながり」が生徒たちの原動力になっているのですね。
本校では、生徒間の縦のつながりも大切にしています。その代表的なものが、中学2年生が中学1年生に数学のアドバイスを行う「合同授業」や、中学1年生から高校2年生まで必修の「本数検(本郷数学基礎学力検定試験)」です。先輩と後輩が共に学びながら、時には先輩が後輩をリードし、時には後輩の姿が先輩の良い刺激になる。そうした積み重ねが、学年を超えて切磋琢磨する本校の文化を醸成したのだと思います。
卒業生と、社会と、学年を超えた仲間と、教師と…生徒たちはさまざまなつながりの中で気づきを得て、成長していきます。そして、そのようなつながりを生み出し、循環させ、生徒の今を未来につなげていくことが進路指導の重要な役割だと考えています。
本校で、頼れる卒業生やお互いを高め合える仲間に囲まれながら勉強にも部活動にも思いきり打ち込んで、素晴らしい未来を一緒につくっていきましょう。
取材日:2026.8.25
