予測困難な未来社会で活躍できる人材を
豊かな体験に基づく実学を礎として育てていく

東京農業大学第三高等学校・同附属中学校

予測困難な未来社会で活躍できる人材を豊かな体験に基づく実学を礎として育てていく

東京農業大学第三高等学校および同附属中学校は、東京農業大学併設の男女共学校として、創立以来「不屈(Indomitability)・探究(Inquiry)・信頼(Reliability)」を教育目標に掲げている。2020年から教育改革に取り組み、改革の3本柱として「グローバル教育」「実学教育」「学内完結型教育」を打ち立て、予測困難な未来社会で活躍できる人材の育成に力を注ぐ。東京農大との連携による留学生との交流や、ダイズ栽培、ヒラメ養殖など個性ある同校の取り組みについて、神山達人校長にお話を伺った。


―まずは御校の教育目標について教えてください。

神山 東京農業大学の創設者の榎本武揚は、江戸幕府の幕臣としてオランダに留学、そこで国際法をはじめ多岐にわたる分野を学んだ人物として知られています。明治新政府ではその才能と不撓不屈の精神が評価され、逓信、文部、外務、農商務などの大臣を歴任しました。その生き方を表す「不屈・探究・信頼」を、約40年前の高校創設時に教育目標としました。近年の学校教育で注目される「探究」をはじめ、時を経ても古びることのない普遍的な教育目標であると自負しています。

―2020年から取り組まれている教育改革について教えてください。

神山 教育改革の根幹にあるのが、予測困難な未来社会で活躍できる人材の育成です。本校では長年、社会に役立つ学問を学び、その成果をもって社会に貢献できる実学教育に力を入れてきましたが、そうした取り組みを整理してまとめたうえで、「大胆なグローバル化」「実学教育の強化」「学内完結型学習体制」を教育改革の3本柱として打ち立てました。

地球規模での国際理解を深める取り組み

―3本柱、それぞれの取り組みについて具体的に教えてください。

神山 まず「グローバル化」では、「読む・書く・聞く・話す」の英語の4技能を高め、使える英語力を伸ばします。具体的には、英語を使った学年ごとの学校行事を実施しています。中1では海外からの留学生と交流する「イングリッシュワークショップ」、中2では留学生と3日間共に過ごす「グローバルイングリッシュキャンプ」、中3では希望者を対象にした「ニュージーランド語学研修」、高校では「オーストラリア修学旅行」「ブルネイ教育研修」などです。また、2023年からは「世界五大陸との交流」テーマに、世界のさまざまな国や地域から東京農業大学に留学中の学生を招き、交流会を行なっています。海外といえば欧米に目が向きがちな生徒たちに、アフリカやブラジルなど「グローバル」の言葉通りに地球規模の視野を持ってもらうことが狙いです。加えて、昨年は南極観測に参加されていた先生による講演会を実施し、南極大陸への理解を深める機会も設けました。

―中高とも留学生との交流を重視されているのですね。

神山 英語を学ぶ意味は、英語というツールを用いてさまざまな国の人たちと交流することです。言葉を交わす中で、その国の文化や生活を知り、地球の裏側にあるような遠い国も身近に感じられるようになります。異文化理解とは、そうした交流から生まれるものだと私は考えています。

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命の尊さを学ぶ実習と専門性を深める校外学習

―続いて、「実学教育の強化」はどのような取り組みをされていますか?

神山 中1は屋上菜園にダイズを植えて育て、収穫したダイズを使って味噌をつくります。中2はヒラメの養殖です。NPO法人の協力のもと、幼魚から成魚まで育て、最終的には調理されたその身をいただきます。中1、中2ともに生き物を育てる経験とともに、生徒たちに命の大切さや食べ物のありがたみを感じてもらいたいと思っています。中3は3泊4日の北海道への修学旅行で、知床の自然を体験するネイチャーツアーに参加するほか、新巻きサケづくりに取り組みます。食品加工を体験するだけではなく、アイヌの方のお話しを聞き、その食文化を体験的に学ぶことも狙いです。このほかにも「農大DAY」として、東京農業大学各キャンパスを訪問し、大学の先生や学生さんから最先端の研究に触れる高大連携教育を展開しています。高校では、これらをさらに発展させ、各教科でのフィールドラーニング(校外学習)を実施します。

―高校では大学と連携した実学教育が新たに始まったそうですね。

神山 今年度から「アントレプレナー系」「医療技術系」「科学技術系」といった学問分野に特化した「特化フィールドラーニング」がスタートしました。医療技術系は埼玉医科大学病院、東京情報大学、科学技術系では千葉工業大学などの協力のもと、医療や研究の現場を訪れ、実践的で専門性の高い学びを深めています。

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神山 達人 校長

学習環境を整え生徒の進路をサポート

―「学内完結型教育」はどのような取り組みでしょうか?

神山 本校は自然に恵まれた環境でのびのびと学んでもらうことを大切にしています。しかし、遠方から通う生徒も多く、受験のための塾に通いたい生徒には立地的に不便な一面がありました。「学内完結型教育」はそうした課題を解決するための取り組みです。教員による放課後講習や「学内塾」をはじめとするスクール支援事業の活用、学習スペースの整備などを進め、学内で十分に勉強ができる体制を整えました。特に外部の講師が担当する学内塾は、教員による授業とは異なる緊張感があり入試対策などに役立っています。また、夏休みや冬休みには特別講習も開講しており、私自身も日本史の講習を受け持つなど、まさに教員全員で学習のバックアップに努めています。そのほか、大学教員による「進路ガイダンス」や、担任や進路指導教員によるこまめな進路相談など、生徒の進学を手厚くサポートしています。

―教育改革により、進学実績などはどのように変化しましたか?

神山 本校の実学教育は総合型選抜 や学校推薦にマッチしており、そうした選抜方式での合格者数が増えています。また、高校での志望進路に合わせたコース制も成果を上げています。今後はさらに国公立大学の合格者を増やしていきたいと考えています。他方、本校への入学志望者もここ数年増えています。地域社会での本校の評価が、近隣からの志望者増を後押ししており、一定の手応えを感じています。

―今後、どのような学校にしていきたいとお考えですか?

神山 私が目指したいのは「褒めて育てる」「笑顔を増やす」「満足度を高める」教育です。生徒が主役となって生き生きと輝くことができるように、制服の選択肢を増やすなど自由度の高い学校づくりを進めてきました。クラブ活動においても、これまで運動部から世界大会クラスのOBを輩出してきましたが、3年前に創設されたダンス部が全国大会連続出場するなど、幅広い分野で活躍する生徒が増えています。これからもより多くの生徒が、自分の個性を伸ばしながら、活躍できる学びの場を広げていきたいですね。

取材日:2026.9.24